翻訳家の柳瀬尚紀氏は「辞書は調べるだけでなく読むものだ」といい、三島由紀夫は「辞書は疑問が生じてから引いていては遅い。あらかじめ読んでおくものだ」と言いました。
確かに辞書には性格があり、強みがあります。それと同時に分厚くなってしまうがゆえに情報を割愛してる箇所もあります。この辺りは、柳瀬氏の言葉を借りれば、「辞書は一長一長」。
割愛された部分という短所は仕方ないとして、どの辞書にどんな内容が載っているか、事前に研究しておくことが重要です。なぜなら、疑問が生じてからでは、どれを調べればいいのか分からないからです。
そこで、辞書はなるべく多く用意しましょう。難関大学を目指すなら、英語の辞書は最低でも3冊、できれば5冊以上は用意すべきです。一般的な大学を目指すにしても、必ず1冊は持つべきです。単語帳のみは危険です。
では、どんな辞書を用意すべきでしょうか。
物書堂のアプリなら、
・ジーニアス6(英和・和英)
・ウィズダム英和和英
・研究社の新和英大辞典
まずはこの3冊です。
余裕があれば、ランダムハウスとジーニアス英和大辞典(この2冊に語源の解説が載っている)そして、OALDとCobuildでしょう。
紙の辞書なら、ジーニアス英和の机上版、ウィズダム英和辞典の2冊です。ジーニアス机上版はさすがに持ち運びはできないと思いますので、学校のロッカーに置きっぱなしにするか、家に1冊置いておくのが理想です。
なぜ机上版をお薦めするかというと、机上版だと「読む」ことができるからです。
(この机上版の読みやすさはぜひとも本屋で手に取って実感してみてください)
例えば、stillとyetの違い、if notとunlessの違い、latelyとrecentlyの違い、as you knowとas you know itの違いなど、実に多くの情報が載っており、難関大ほどこうした基礎的知識の正確さを要求してきます。
単語帳だと単語の意味しか載ってないケースがほとんどで、これだけだと戦えないのです。
ただ、どうしても英語が苦手で1冊だけというなら、ライトハウス英和がお薦めです。こちらは基本語をかなり詳しく説明してます。
辞書はお金で買える語学力とよく言われますが、辞書は贅沢に多めに購入しておき、そして事前に辞書の性格を知っておくことが大切です。
たとえば、次のような日本文を英訳したいとしましょう。
「電車の中は徐々に空いてきました」
The train has become less crowded little by little.と書いたとして、
becomeは、
come to beでもいいのか?
turned outでもいいのか?
gotでもいいのか?
空いてきたはemptyだとまずいのか?
little by littleはこの位置でいいのか、他に言い換えられないのか、など様々な疑問が生じます。
辞書の性格についても見てみましょう。
学習英和と言われるジーニアスとウィズダムは微妙に記述が違います。
たとえば、latelyとrecentlyについて。
ジーニアスでは
recentlyは「1回限りの行為について、現在完了か過去時制、または過去完了とともに使う」とあります。
latelyは「現在完了、過去時制で使うが、現在まで継続している行為か、反復されている行為」について用いるとあります。
つまり、She got divorced recently(lately×).
She has been living in this house lately(recently×).と使い分けることになります。
ところが、ウィズダムだとこの記述が見当たらないのです。
今度はウィズダムで「様態」のasを引いてみます。
接続詞のところで、as does A 「Aもそう(同じ)だが」という説明があります。
Peter is very stubborn, as was his father.
(ピーターは非常に頑固だ、彼の父親もそうだったが)
He thinks highly of you. As do I.
(彼は君を大いに尊敬しているよ、私もそうだが)
という説明が載っているのですが、これがジーニアスになると語法欄で倒置が起こるとだけ説明があり、ピリオドでいったん区切られた英文は紹介されていないのです。
やはり辞書は1冊ですべてが網羅されているわけではないので、複数購入して引き比べることが重要です。
良質な辞書を1冊でも多く持つことは、自分の進路にまで影響を与える可能性があります。ぜひとも辞書には投資し、事前に辞書の性格を研究してみてください。辞書を引いた回数が語学力に直結します。