難関大学の入試問題では、単に覚えるべき知識を身に着けたかどうかよりも、その知識を使って論理的に物事を分析ができるかどうか試してくるものが多い。つまり暗記だけでは通用せず、論理トレーニングを積んでいなければなかなか受からないようになっている。
では英語の論理とはどのような個所に現れるのだろうか。それは接続詞の使い方や、否定表現に多くみられる。
今回は野矢茂樹氏の論理学の本をベースに(一部は清水幾太郎氏の論文の書き方から)、英語のロジカルな一面を分析してみたい。
英語は日本語よりずっと論理明快な言語で、英語の接続詞や否定表現を通じて、日本語ではあまり意識していなかったロジックに目を向けるようになるのである。
たとえば日本語では、
「私は一生懸命勉強したが、試験に受かった」
「私は一生懸命勉強したが、試験に落ちてしまった」
と、日本語の「が」はどちらにも使えるが、それだけではその後の展開が見えにくい。
これらを英訳すると、それぞれ、
I studied hard and passed the test.
I studied hard but failed the test.
とはっきり接続詞の使い方を分けなければならない。
否定表現においても英語は論理明快。
例えば、
「私は鉛筆も消しゴムも持っていない」は、
I don't have a pencil or an eraser.
と言わなければならない。
または、
I don't have a pencil and I don't have an eraser.
と少しぎこちないが繰り返す必要がある。
「私は鉛筆と消しゴム両方持ってるわけではない」は、
I don't have a pencil and an eraser.
もしくは、
I don't have a pencil or I don't have an eraser.である。
これらは数学や論理学ではド・モルガンの法則と呼ばれる。
not A or B= not A and not B
not A and B = not A or not B
と言い換えられる。
日本語でこれらを説明するとややこしいものになるが、英語の接続詞だと数学の記号のように分かりやすいのだ。
最後に一つ。
英作文において(日本語でもだが)論理的に分析することは大事である。
例えば、
I like sports, so I'm a member of the basketball club.
と書いたとする。
これを日本語にすると
「私はスポーツが好きだ。だからバスケ部にいる」
しかしこれは、
X:「私は東京都民だ。だから私は新宿区民だ」と言ってるのと同じである。
もしこれが、
Y:「私は新宿区民だ。だから私は東京都民だ」なら問題ない。
ここでロジックを確認する手法として「対偶」を使ってみたい。
「私はAだ。だから私はBだ」の対偶は「私はBではない。だから私はAではない」になる。
Xの対偶は「私は新宿区民ではない。だから私は都民ではない」となり、世田谷区民かもしれない、渋谷区民かもしれないと、突っ込みどころがたくさん残る。
Yの対偶は「私は都民ではない。だから新宿区民ではない」で正しいことになる。
最初のバスケの対偶を確認してみる。
「私はバスケ部にいない。だからスポーツが好きではない」になってしまう。
これではバスケ部ではなく野球部にいた大谷翔平はスポーツが好きではないことになるのだろうか。
正しくは、
I'm a member of the basketball club so I like sports.である。
対偶を確認すると、本来のあるべきロジックが見えてくるのだ。