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短文暗記が実力アップの鍵

伊藤和夫先生の本を使う受験生を最近はめっきり見なくなったが、今でも伊藤師の著作は金言・ネタの宝庫である。

 

伊藤和夫の英語学習法(現在は絶版)では、受験生が陥りがちな勉強法に対して伊藤師が警鐘を鳴らす。つまるところ、「守・破・離をきっちりやれ」である。型を覚えずに我流で英文作成して変な癖がつくと、あとで修正が利かなくなる。

 

巷で売られている合格体験談では受験生が「合格」という事実をもとに、守破離でなく我流でやってたまたまうまくいったケースを一般化してしまっているものが一部に含まれている。「合格者の言うことだから」とすべてを正しい学習法として鵜呑みにするのは危険だ。まずは受験英語のプロが何を言うのか、耳を傾けてみたい。


師は短文を覚えることの重要性を声高に説く。まずはp104から紹介したい。文中に出てくる700選とは駿台から出てる新・基本英文700選のことである。

 

「引用開始」

(700選は)覚えれば覚えただけのことは必ずある。たとえ忘れても、覚えるという操作を通じていったん意識の底に沈めたものが、無意識の世界からも完全に消滅することなど決してない。自分では忘れてしまったと思っているものの積み重ねが、英語に対する君たちの姿勢を作る。英文に対する解釈の可能性をコンピュータは機械的にひとつひとつ検討してゆかなければならないが、人間がそうしなくて済んでいるのは、頭の中にすでに英語がインプットされているから。700選を覚えることからは、何百ページの英文を読むことに匹敵する効果があがることも忘れないでもらいたい。ひとつひとつの英文は忘れてもいいから。

「引用終了」

 

短文をたくさん覚えると読解スピードがあがる。英語に慣れていない人は一文一文を解析していくが、短文のストックのある人は2,3行まとめて何が書かれてるのか予測しながら読むことが出来る。読解において解像度が上がり、視野が広がるわけである。

 

次に「誤った勉強の傷あと」という英作文における怖い失敗例をp108から紹介したい。

 

「引用開始」

要領のよい人はまず正しい英文だけに接することで、頭の中に正しい英語ができあがる。ところが、要領の悪い学生は、必要な英語を頭の中に入れないままで、苦労して英語でないものを「作る」んだ。正しい英語の考え方は、正しい英文に接することによって出来上がるんだけど、努力して英語でない文章を作った場合には、その結果できた「非英語」が本人の意志とは無関係に脳に刻みつけられることになる。しかも努力が大きければ大きいほど、その傷あとはかえって深く、10ページや20ページの正しい英文に接してももう消えないんだ。

「引用終了」

 

生徒に対しては「単語を単体で覚えるくらいなら、その単語が使われてる英文を何度も読み、できれば英文をそのまま覚えなさい」と伝えている。その方が英作文で正しい使い方ができるからだ。

 

例えば、「~のお問い合わせ」と書きたいときに、inquiryだけしか覚えてないと、

inquiry aboutなのか、forなのか、ofなのか迷うことになる。

 

「~のお願い」と書く時もrequestしか覚えてないと、

request aboutなのか、forなのか、ofなのか迷う。

 

短文で覚えれば前後で使われる語句もセットで覚えるから間違いが大幅に減るのである。

 

現代は便利な時代で安易な学習法が流行る傾向があるが、楽なスタイルには副作用がつきものなのだ。その副作用の注意書きとして伊藤和夫の英語学習法は広く読まれるべきである。

 

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